キジを見た思い出

子どものころ、一度だけ野生のキジを見たことがあります。
昔はキジが沢山いたと自分の暮らす地域について習ったことがあり、実際に目にすることができてとてもうれしかったです。
今ではほとんど見られなくなったとも習っていたので。

その頃私は仲良しの友達と探検ごっこをよくしていました。
造園業者さんの敷地に入っていたのでしょうか。
畑のようにずら~っと低く同じ木が植わっているところを歩いていました。
低い木を挟んで友達と二人、いつものように色々な話をしながら。

 「!」「!」
私たちは同時にハッとして顔を見合わせました。
そして小さく低く「キジだ!」と言い、そ~っと近づこうとしました。
挟みうちにしようと、もう二畝ずつ左右に分かれキジのいた方向へ走ったのです。

でも、辺りには膝くらいの低い木しかないのに、もうキジは見れませんでした。

がっかりしながらも「残念だったね~でもキジが見れて感激だね~」とお互い嬉しく話していたのですが、ふと私が言いました。
「本当にオスは緑色なんだね!」
すると友達は、
「ううん、メスだった。茶色だったよ!」

そこから激しく言い合いがはじまりました。
メスだ!オスだ!
緑だった!茶色だった!
そんな見間違いするなんておかしいんじゃないの!

しばらく言い合っていたのですが、埒があかないので、
「もうこのことについて、お互いの見たものに何も言わないことにしよう」
と決めました。
私たちは一緒にキジを見た。そこだけが確か。
私はオスだと思っているし、友達はメスだと思っている。そのことについてはとやかく言わない。
ケンカは終わり。

その日はしばらく気まずい空気でしたが、それはそれと探検ごっこを続けました。
なので、彼女とは今でも仲良くしています。
白黒つけないで本当によかったです。

大人になってから、私たちが見たのはつがいだったのかもしれないと気づきました。
巣が近くにあって、オスが私たちをおびきだそうとしたのかも。
友達はメス側にいて。